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島崎信のモノローグ Vol.2 センスの磨き方

2016/07/08

Shimazaki Makoto島崎信のモノローグ

北欧デザインの第一人者として知られる島崎信先生。お聞きするお話には、いつも豊かに暮らすヒントがあふれています。自分たちだけに留めるのはもったいなくて、まとめました。

  

Vol.2
センスってどうやったら磨けるのですか?

Shimazaki-Makoto-Knives

先生が高校時代にコレクターから譲り受けたナイフ。100年前近くに使われていたトナカイを放牧しているフィンランドのサーメ(ラップランド人)が使っていたもの。今でも大切にしている。
 
島崎信(しまざき まこと)
東京都生まれ。武蔵野美術大学名誉教授。東京芸術大学卒業後、デンマーク王立芸術大学建築科修了。日本における北欧デザインの先駆者であり第一人者。インテリア、家具を中心に、北欧のデザイン自体はもちろん、暮らし方やその根底にある考え方を伝えてきた。日本のデザイン全般を黎明期から見続け、その見識を活かしたビジネス面での実績も多数有する。著書、講演の実績多数。現在も、和太鼓、民藝、意匠権問題、そしてインターネット…など、関わる領域を進行形で増やしながら複数のプロジェクトを推進中。
 
木下
家具もインテリアも初心者のタブルームスタッフ。
 

木下:前回のお話で「本当にいいものは値段で決まるものではない」ということはわかったのですが、それを見抜くセンスが私にはありません。先生がいいと認めたものを買う方が間違いがないと思います。何を買うべきか、教えてください!

 
島崎:そういうことを言っているといつまでたってもモノを見る目が養われないよ。

「間違いたくないから教えてほしい、でも私の個性を認めろ」なんて言ってくる人がいるけどそれは都合の良すぎる話。分からないことに挑戦することがセンスを磨く糧となるんだよ。それを教養とも言うね。

世間の言ういいものなんてどうでもいいじゃない。自分が好きだなと思うものに囲まれてみなさい。

木下:いやぁ、今までいろいろと人並み以上に買い物はしてきて、「これいい!」とお店で思ったものを毎回買ってはいるんです。ただ、家に帰ってみるとイメージと合わないということがよくあるんです。

島崎:単体でも好きなものを探せるのは良いこと! 家で並べてみて仲間外れなものを探し、それに代わる合うものを探すというのを繰り返してごらん。繰り返すうちに少しずつイメージが合ってくるよ。

この繰り返しの工程が進歩を生むんです。並べてみれば「合わない」ということがことがわかるんでしょ? それはまだ救いがあるよ(笑)。
 

木下:うーん、なんかもっと近道ないんですかね?

島崎:近道なんてしない方がいいよ。近道せずに失敗するのがいい。失敗して「なぜうまくいかなかったか」を考えることでセンスは磨かれるんだから。

木下:ではすこーしだけコツを、いや、ヒントをいただけないでしょうか?

島崎:僕の友達にね、たくさんいい家具を持っている人がいてね。部屋の中が名作家具でいっぱいなわけ。

でもそこに、1つだけその場にそぐわない古い椅子があったの。「どうしたのこの椅子?」と聞いたら、「これはおじいちゃん、お父さんが使った椅子でね。子どものころからずっと見ていて、たまに座らせてもらえることがうれしかった椅子なんだよ。だからこの中で一番素晴らしい椅子はこれなんだよ!」と言われた。

名作を差し置いてその椅子がナンバー1。評価は人それぞれということだよね。

誰かにかっこよく見せようとではなく自分の宝物になりそうなものを探す。これがその人の個性と独自のセンスを磨くんだと思うんだよね。人にどう見られるかなんて関係ない。

子供のころの宝箱を持ってなかった? 石が入っていたり、セミの抜け殻だったり。大人から見たらガラクタなんだけど本人にとってストーリーがあるもの。それが「好き」ということだと思うんだよね。世の中での評価、値段で見なくていい。

自分の「好き」があると知識欲が出てくる。アンテナが立ってきて、人の「好き」も気になってくる。その結果として、長く愛されている名品にたどりつく事もあると思う。それでいいじゃないか。そんなもんじゃないの?

評価の基準は人それぞれ。自分が幸せになれることだけを考えてれば、センスが作り上げられていくんだよ。

Shimazaki Makoto_vol2_001

事務所で見せていただいた先生にとっての”セミの抜け殻”。版画板は高校生くらいころ作ったもの。折り紙の椅子は友人の子供が作ってくれたもの。巻尺とマッチケース(中はパズル)は「使わないけれどなんとなく捨てられない」そう。
木下:うーん、何から始めたらいいんだろう。

島崎:自分が毎日使う椅子とか、茶碗でもいい、お箸でもいい。例えば箸一つとっても奥深いよ。自分が欲しいものかどうか考えながら使ってみると、そばを食べる時に滑ってしょうがないとか、先がとんがっている方がいいなとか色々気付くことが出てくる。何でもいいので撫でていたくなるようなものとひとつひとつ出会ってみる。そういうものがわかってくるとくらしの達人になれるよ!

参考にしたいからと僕が一番好きな椅子をよく聞かれることがあるんだけど、答えないようにしているんだよ。それは借り物の知識にしかならない。僕の価値観だから。いいものに出会えるか不安だろうけど、失敗するのも価値。だからまず自分がいいというものを買ってみることからはじめるのがおすすめだね。

見栄は捨てること。人に「アラ!」と言われたいとかさ。本当に豊かな暮らしというのは、毎日どこかにご招待されたり出かけて行ったりという非日常の事ではなくて、日常性の中に神経をつかっていいものをそろえていくことだと僕は思うんだよね。お出かけに神経使うんじゃなくて、毎朝起きた時からの自分の生活に神経使ってみる。

木下:毎日神経を使うのは疲れるかもしれません…。<

島崎:神経を使うというか、意識をすることだね。自分が好きなものに囲まれているか。それすら面倒ならいい暮らしは放棄しなさい。

でも無神経で暮らすのも一つの生き方だと思うけどね。考えない方が楽だと思う人もいるかもしれない。
実際考えないで動く人がどれだけ多いか。その中でちょっとでも「ん?」と違和感を覚えることがある。
それはいい兆候、これではないっていう意識のアンテナは立っている表れ。それをチャンスに何がいい暮らしを阻害しているのかちゃんと考えてみる。他人に迷惑をかけないで自分がいつまでも続けていきたい暮らし方をね。いい第一歩じゃないか。

木下:ずいぶん哲学的ですね、先生。<

島崎:そうだよ(笑)。

「ずいぶん変わった暮らししていますね。」「はい僕はこれが好きなんです」

これでいいじゃないの。ひとそれぞれの暮らしがあっていいと思う。人生観があって。画一的にしなければいけない理由はない。たどり着いた価値観が誰かより劣っているとということはないしおかしいことじゃない。

余裕がある時、少し自分のしたい暮らしについて考えてみるといいと思う。そういう時間でセンスは磨かれていくんだよ。

※次回は、「ロングセラーアイテム」についてお話しいただく予定です

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