島崎信のモノローグ Vol.1 本当に好きなものの見つけ方
2016/05/11
島崎信のモノローグ
北欧デザインの第一人者として知られる島崎信先生。お聞きするお話には、いつも豊かに暮らすヒントがあふれています。自分たちだけに留めるのはもったいなくて、まとめました。
本当に好きなものってどうやって見つけるのですか?
島崎信(しまざき まこと)
東京都生まれ。武蔵野美術大学名誉教授。東京芸術大学卒業後、デンマーク王立芸術大学建築科修了。日本における北欧デザインの先駆者であり第一人者。インテリア、家具を中心に、北欧のデザイン自体はもちろん、暮らし方やその根底にある考え方を伝えてきた。日本のデザイン全般を黎明期から見続け、その見識を活かしたビジネス面での実績も多数有する。著書、講演の実績多数。現在も、和太鼓、民藝、意匠権問題、そしてインターネット…など、関わる領域を進行形で増やしながら複数のプロジェクトを推進中。
木下
家具もインテリアも初心者のタブルームスタッフ。
島崎:最初から見分けられなくてもしかたがない。ほんとに好きだっていうものが見つからない、そう思っている人も多いでしょう。君は今発展途上の人間で、「見つけたい」と思いはじめたこと、それは可能性を秘めているということ。見分けられるまでの道のりを焦ることはないんです。
ずっと付き合っていけるものとはそれに愛着の持てるものでなければつづきません。では愛着の正体とは何だろう。
愛着とは心の問題です。
何か買おうという気持ちに駆り立てられたら、ちょっと待ってみる。衝動的な気持ちで買ってしまわず、心を広げて一度考えてみることも必要です。
島崎:例えば、他の人たちはどうなんだろうかと。自分よりも経験もある人、いいものわるいものの区別がつく人はたくさんいる。そういう人から吸収してみるのもいいことです。
あとは、昔作られたもので流行り廃りがあるにも関わらずずっと作られ続けているものがある。そういったロングセラーにヒントがあるのではないか。例えば、ポール・ヘニングセンの「PH5」という照明器具があります。
これは1958年にデザインされたものなのだけどへニングセンは基本的なデザインを1930年代にしています。そしてPH5が60年経った今も、デンマークは勿論、日本でも非常にポピュラーに使われています。値段は決して安いとは言えないけれど。
島崎:今でも8万円くらいするのじゃないかな。
数字で見れば間違いなく高いと思うでしょう? だけどなぜそんなに長い年月を越えて売れるのか。つまり価格の高いということはどういうことなのか。値段が高くとも売れ続けているのであれば、そこには必ず理由がありそれだけの価値があるのではないだろうか。
島崎:もちろん全く同じものであれば安い方がよい。私は安いものを否定したいわけではないし、実はね、僕は「100円ショップ」も好きなんです。
島崎:安かろう悪かろうのものの中からときたま悪くはない「めっけもの」があった時のうれしさはたまらない。そういう気持ちも大変理解できるなあ。
例えばジェムクリップだとかキャンドルとかバッテリーとか、どこで買っても品質が同じであれば100円ショップでいいのじゃないかな。
安いものはダメだとも思わないし、ブランド物で全身を固めているわけではないのだから。
島崎:何を、どこで、どうして、買うのか。その買い方が問題なんです。それをしっかり考えて過ごせば、徐々に愛着のあるものに囲まれた生活になってくるはずです。後悔しないために物を見る目を自分で養おうという思いを持ってほしいのです。
島崎:ジェネリックは薬でもあるよね。薬の場合、効き目という機能を買っているから飲んだら終わり。その後に所有し続ける持ち続ける充実感は持たないでしょ。
家具はそこが違う。
ずっと持ち続けることを考えた時、正規品とジェネリック家具、どちらが愛着がわきますか? それでもジェネリック家具の方だというなら、ジェネリック家具を買えばいいと思う。
ものの価値は値段だけではない。愛着が生まれるものになるかどうかで選ぶという姿勢もひとつあるのではないだろうか。
あのね、僕は「断捨離」なんてするもんじゃないと思っているんです。
島崎:お金をかけて自分が買ったものを捨てる、それって過去の自分の判断を踏みにじるということと同じなのです。そんなことしなくてもよい生活をしたいものですね。もっと自分の判断を大事にしたらと思うんです。
島崎:すぐには無理でも、ものを捨てなくていい生活を目指す。自分が見つめる「星」を明確にする。それをやろうじゃないの。
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